J.V.OはHACCPシステムを調査・研究し、畜産物に関わる業界関係者へ導入を奨めています。
ハザード(潜在的な危害)とリスク(管理すべき危害)との違いについてもう少し分かり易く、具体例を挙げて説明して下さい。
食品の安全性に関するハザードとは、人の健康に悪影響をもたらす食品中の生物的、化学的、物理的な因子(原因物質)、または食品中の状態を云います。食品の安全性に関するリスクとは、食品中にハザードが存在する結果として生じる人の健康への悪影響の確率とその程度のことを云います。
鶏卵の場合で例を示すと、ハザード(潜在的な危害)としてサルモネラ属菌等があげられ、鶏卵を介した人の食中毒がリスク(管理すべき危害)ということになります。
管理No.2D
鶏肉の用途で、十分に加熱することを設定している場合、サルモネラ等はハザードでなくなると思うが、いかがでしょうか?
完全加熱されることを前提に考えればその通りハザードではなくなるものと思われます。しかし、その川下(出荷以降)では、どのように取扱かわれるか分かりませんので夫々の段階で危害分析を行いハザードとして扱うかどうかを検討されなければなりません。
過去に200℃で調理されたから揚げでSEによる食中毒事件が起きていることから、農場段階での持込み、食鳥処理場や加工工場段階での汚染よって起こります。
加熱すれば全てよしではなく、それぞれの段階で十分な衛生管理が行われることが重要です。
管理No.9A
海外では品質保証プログラム等を行う上で、病原体の保菌率を下げる等の低減対策が盛り込まれているが、日本で農場HACCPを行う上で病原体の低減という視点から、目標値を具体的に定めてHACCP運用することは可能でしょうか。
目標値を定めて運用することは当然可能です。
このためには、はじめに保菌率を低下させようとする病原菌、検体の採取法、採取のタイミングなど対象とする検体が特定されるように設定し、まずは現状把握するためのデータを1年程度収集し、得られたデータをもとに改善目標を設定します。
そして改善のための要因分析を徹底的に行い、その要因を一つひとつ潰して行くということになると考えます。
ただし要因によっては時間がかかると思われますが。
管理No.10A
飼育農場において、考えられるCCPは何でしょうか?抗生物質残留等はCCPとして適当でしょうか?
CCPは、はじめから存在するものでも、“これがCCPである”と決めつけるものではありません。
CCPは、危害分析を行い、洗い出されたハザードを「起こり得るハザードの厳しさ(ハザードに曝された場合の結果の重大さ)」「その起こり易さ」「ハザードをコントロールする方法」で評価して決定します ※注
従って、抗生物質残留がCCPとなることも十分あり得ることです。
なお、飼育農場における抗生物質の残留について以下に留意すべき事項について示しますので参考にして下さい。
抗生物質を使用した家畜(個体または群)を識別すること、および薬剤名、使用量、使用日時、使用者など抗生物質の使用に係る情報を記録付けし、識別された家畜を出荷する際には、薬剤の休薬期間が充分にクリアされていることを記録と照合し確認することが重要です。
すなわち、農場現場では飼育段階で使用した薬剤の記録に基づいて、識別された家畜を出荷前(例えば前日)に休薬期間が充分クリアされているか否かを確認し、OKであれば出荷、NOであれはクリアするまで出荷延期にしなければなりません。
現実には出荷を延期することが難しい家畜もあるので、薬剤使用時に出荷時期を確認するなど十分な配慮が必要となります。
なお、家畜の健康状態により残留期間が変わることもあるので、休薬期間は標準の倍程度をとっておくことが安全かと考えます。
※注:FAP/WHO合同食品スタンダードプログラム 〔対訳本〕食品衛生基本テキスト(発行元(株)鶏卵肉情報センター)を参照されたい
管理No.14@
人為的な毒物混入等の事件があるが、人の管理についてHACCPとは関連があるのか?
まず、食品防御と食品安全との違いを確認する必要があります。
食品防御(フードディフェンス)は、薬剤や化学物質あるいはその他による意図的(悪意のある)な汚染から食品を守るために施設や従事者等を管理するもので、一般的にはフードディフェンス・マニュアルが作成され従業員の教育もマニュアルの従って教育され、また、監視されます。
一方、食品安全は、HACCPシステムで行う危害分析によって洗い出された危害を予防的にコントロールするもので、コントロールする手段を手順書やSSOPとして文書化し、従事者はこれらの文書化された手順や方法が教育・訓練されます。
このように、食品防御と食品安全とは目的も違いますし、また従事者の教育内容も異なります。
現実的には、安全な食品を生産・製造するために、HACCP(食品安全)とフードディフェンスとは同時並行して実施される必要があります。
管理No.7C
NPO法人
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