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HACCP計画作成の手順(下)

〜危害要因分析とCCP決定に関わる書式の作成手順〜(要約)
日本HACCPトレーニングセンター
(月刊HACCP2009年8月号より)

前号では、HACCP計画に係わる3種類の書式のうち「書式A」、「書式B」の記入法について解説した。本稿では主として「書式C」の記入法について解説する。

HACCP原則6「検証」とは?

書式A〜Cは、HACCPの7原則に沿って作成して行く。書式Aは原則1.危害要因分析(HA)、原則2.必須管理点(CCP)、書式Bは原則3.モニタリング、原則4.許容限界、原則5.是正措置、書式Cは原則6.検証方法、原則7.記録付けに係わる書式である。
今回は書式Cを作成する。

NACMCF(The National Advisory Committee on Microbiological Criteria for Foods:食品微生物基準全米諮問委員会)では、検証について「HACCP計画が正しいものであり(=現在行っているコントロール手段で、危害要因(ハザード)をコントロールできるか?)、システムが計画通りに運営されているか(=決められたことを決められた通りに行っているか?)を確かめるモニタリング以外の方法」と定義している。
ここでいう「正しい」とは、「科学的根拠に基づいている」という意味である。「これまでの方法で問題が起きていないから、これからも大丈夫だろう」といった説明は、科学的根拠に基づいているとはいえない。長年の経験は説得力があり、正しいものが多いだろう。そうであるなら、その正しさは科学的に証明できるはずである。

検証には、HACCP計画そのものの正当性まで含まれるが、書式CではCCPの検証のみを取り扱うことになっている。書式CではCCPの検証のみを取り扱うので、“出荷前”のCCP検証(日々の検証)や、CCPのバリデーションおよびバリデーションに関する項目を中心に、書式を作成して行くことになる。

“出荷前”のCCP検証では、「CCPの記録をチェックせずに出荷することはできない」ということが前提になっている。CCPをチェックして、「モニタリングができていたか?」「逸脱はなかったか?」「逸脱があった場合、是正措置が正しくとられたか?」といったことを確認する。

バリデーションは、検証の一要素である。バリデーションとは、「HACCP計画が適切に実施された場合に、ハザードが効果的にコントロールされることを証明すること」である。
「決められた許容限界は科学的に妥当か?」「モニタリング方法は科学的に妥当か?」「是正措置は科学的に妥当か?」といったことを確認する。
科学的根拠としては、専門家の意見、科学論文、法的な規格などが用いられる(「法や規制は、科学的根拠に基づいて作成されている」ということが前提になるが)。
実際に書式Cを作成してみると、食品企業が規制当局の査察官に対して、書式によって「当社ではきちんとHACCP計画を運用しています」と説明することを意識している、ということが感じられる。

HACCP原則7で必要な「記録」とは?

HACCPの原則7は、効率的な記録のつけ方や文書化の方法を確立することである。その目的は、HACCP計画が決められた通りに行われていることを確認し、証明することである。
書式Cに必要な記録のうちで重要なものとしては、HACCP計画実施に伴って生じる記録、出荷前検証の記録、CCPモニタリングの記録、逸脱と是正措置の記録、およびこれらの記録を検証した上で出荷したという記録などが挙げられる。これらの記録は、モニタリング担当者以外の者がつけなければ意味がない。

また、測定に用いた機器類が正確でなければ意味がない。そのため、測定機器などの較正(Calibration)も検証の要素であり、「構成の記録」も必要である。適切な構成作業を行うためには、あらかじめ較正の方法と頻度を決めておく必要がある。構成の頻度は、機器類の「狂いやすさ」と「狂った時の影響の大きさ」で考える。較正に用いた標準(標準温度計や分銅など)も較正の対象になる。
その他、バリデーションに付随する記録(許容限界が妥当であることの証明、モニタリングや較正が妥当であることの証明など)、CCPを確実に管理していることの記録(係員の作業に間違いや手抜きがないことの記録、係員の教育の記録など)も必要である。

書式Cの作成方法

書式Cは、「検証作業」「バリデーション」「記録」に分割されていて、「検証作業」については「何を」「頻度」「誰が」に分割されている。
「検証作業」は、さらに「記録の確認」「独立したチェック」「較正」に分けて記入する。

出荷前のCCP記録の確認
CCP記録を確認した年月日、署名を記入する。この作業は「定められた」「訓練された」「モニタリング担当者でない」人が行う。

較正作業
どの機器を、何を用いて較正したか、その時に用いた標準は正しいのか。測定機器が設備などに組み込まれている場合には、その較正をメーカなどに外注しなければならない場合もある。
モニタリングの手段が「目視確認」の場合など、較正作業が必要でない場合もある。

CCPの独立したチェック
「CCPの独立したチェック」は、要するに「モニタリングや是正措置が正しく計画されていて、それがきちんと運用されていることを、別の方法で検証すること」である。それには次の2つの要素がある。
@モニタリングの有効性を別の方法で確かめる
わかりやすく言えば、「本来知りたいものを測定すること」を「別の方法で間接的に計測して知ること」である。本来はこれが知りたいのであるが、頻繁に行うことができず、あるいは/または、結果が出る前に出荷する必要があるので、間接的ではあるがリアルタイムにできる方法をモニタリングの方法として採用するが、そのモニタリングの方法が正しいことを「たまに検査を行うことで検証すること」である。
Aモニタリングが正しく行われているかを、別な人(より熟練した人など)がチェックする。
モニタリングや是正措置の担当者の活動を、上司など担当者以外の人が「やると決めたことをきちんとやっているか?」を観察し、確認することである。観察は定期的に行い内容を記録に残す。

バリデーション(科学的証明)
バリデーションは、許容限界の設定が科学的に妥当であることを証明する(=妥当性を示す証拠を集める)ことである。
バリデーションには「独立したチェック」の手順や頻度の妥当性についても確認する必要がある。

記録
CCPに付随して生じる記録としては、出荷前検証の記録、担当員の教育記録、較正の記録、機器のメンテナンスの記録、独立したチェックの記録、HACCP計画を決定する際に根拠として用いた実験の記録、危害要因分析や工程に変更のあった場合には許容限界・モニタリング・是正措置の再評価記録などが挙げられる。
すなわち、書式Cの記録とは「CCPでの管理手法が正当であること、CCPを確実に管理していることを証明するもの」ということができる。

書式Cに関する議論
現行の書式Cで「検証」をすべて書式化できているわけではない。例えば、システム検証やHACCP計画そのものの再評価などについては、書式Cでは取り扱わない。これらの「検証」を含めた書式はまだ開発されていない。
また、例えば「機器の較正のふれなどを示す仕様書をバリデーションに加えるか?」ということについて意見が分かれているが、「常識的に考えて起こりやすく、起きた時の危害が深刻かどうか」を判断基準とすればよい。

(全文および書式Cは月刊HACCP9月号(2009年) Vol..15、35−42、2009参照)


HACCP7原則の前に行う「5手順」
書式Aを作成する前にHACCPの準備段階と位置付けられる「5手順」を行っておかなければならない。5手順とは「手順1.HACCPチームを編成する」「手順2.食品を説明し、その流通を記述する」「手順3.食品の意図する使用法を説明し、対象とする消費者を明記する」「手順4.食品の製造・加工のプロセスを説明するフローダイアグラムを作成する」「手順5.作成す他フローダイアグラムを現場で検証する」という5つの作業である。
危害要因分析を行う時には、必ずフローダイアグラムを使用する。また、食品の説明・記述・意図する使用法と消費者の明記などが正しく行われていなければ「この危害要因は、HACCP計画で取り扱う必要があるのか?」「この危害要因をコントロールする手段は何か?」といったことを、正しく判断することができなくなる。

危害要因分析は次の3段階で行う。
 (1) フローダイアグラムのそれぞれのステップについて危害要因を列挙する。
 (2) 列挙した危害要因の重大さを評価する。
 (3) 危害をコントロールする方法を考える

CCP決定の考え方として、次の事項が挙げられている
 (1) CCPの定義〜HACCPでは品質を考慮しない。
 (2) CCPは科学的な根拠に基づいて決定する。
 (3) HACCPで取り扱う危害要因には必ずCCPを設ける。
 (4) CCPの数は少ない方がよい

この論文(記事)では、危害要因分析の3段階、CCP決定の考え方のそれぞれについて分かりやすく説明されており、さらに書式A〜Cの具体的な記入例が示されていて、HACCP計画を作成する上で大変有用である。

また、HACCPで取り扱う危害要因であるかどうかは、危害の重大さで判断するのであるが、その際、有効な資料の一つとなるのは「実際の食中毒に関する疫学調査に基づくデータ」である。この論文には、危害要因分析において活用できる資料として、米国における食中毒の疫学調査のデータ(J. Food Protection Vol.57,820-830,1993)が追記されている。

(全文およびHACCPマスターシートは月刊HACCP8月号 Vol.15 ,46-57,2009を参照されたい)

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