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わが国の家畜防疫体制と農場におけるHACCPの取り組みについて(抜粋)

農林水産省消費・安全局動物衛生課
(月刊HACCP8月号より抜粋)

(前省略)
家畜伝染病の発生時には都道府県知事等により、命令、指示がなされるが、いうまでもなく疾病を発生しないようにすること、すなわち生産者が自ら取り組む発生予防が最も重要である。疾病の発生の届出を待つのではなく、発生防止のために農家が自主的に衛生管理を行わなければ疾病はなくならない。
平成16年に発生した高病原性鳥インフルエンザの発生農場の中に衛生管理のずさんな農場があった。
感染経路究明チームの報告で、衛生管理がなされていない農場での発生がしやすいだろうとの指摘があり、予防法に基づき、飼養衛生管理基準が定められている、飼養衛生管理基準には10項目あり、それぞれ基本的な衛生管理である。
この基準はすべての農場が守らなければならない義務規定であり、守られない場合は最終的には罰則もある処分の重い規定で、それだけ重要な規定である。

飼養衛生管理基準がすべての生産農場で実施すべき基礎であり、土台とすれば、その上に一般的衛生管理プログラムに則った衛生管理による生産管理による生産工程の安全性の確保が図られる。これをさらに進めていき危害(ハザード)を分析して、重要管理点(CCP)を設定して衛生管理を行うといわゆるHACCPとなる。
HACCPは、もともと食品製造を行う食品工場を想定した衛生管理手法である。農場でHACCPを適用しようとしたとき、工場で行われている通り、そのままを適用することは困難である。
しかしながら、農場段階においても一つひとつの手順を改めて文書化し、手順をきちんと定めていくことにより、ある程度危害を管理していくことは可能である。この文書化という手順が非常に重要であろうと考えている。改めて書いてみることによって、さまざまな「気付き」があるものと考えている。

農場にHACCPの手法を取り入れて衛生管理を行えば、すべての病原体をコントロールできる、ということには残念ながらならない。「すべて」は無理だが、それぞれの作業工程で衛生管理上重要なポイントはあり、リスクを下げることは可能である。このポイントをしっかりと押さえ、きっちり管理していくことをしなければ、最終的な畜産物の安全性をより高めていくことはできない。
畜産物の生産においては、農産物の場合と異なり、多段階の製造・加工等の工程を経て消費者のもとに届く。例えば食肉では各農場からの家畜がと畜場、食肉処理場でと畜・解体・脱骨等が行われる。酪農であれば、各酪農農家から生乳を合乳し、乳業工場で処理される。生産農場では当然ながら生きた家畜を扱うことから、危害となる微生物も含め、微生物は常在している。

(一部省略)
最終的な畜産物の衛生管理向上のためには、まず、個々の農場段階での衛生管理を向上させ、病原微生物汚染の少ない家畜を生産することが極めて重要である。その上で、関係する加工・製造段階や地域が一体になって衛生管理を行い、リスク低減に取り組んでいくことが最終的な畜産物の衛生管理上、一層重要となっている。

(一部省略)
農林水産省では、平成14年には、農場でHACCP方式をどのように取り組むのか、畜種ごとの作業工程や管理方法を示した「家畜の生産段階における衛生管理ガイドライン」を策定した。このガイドラインに基づき各都道府県では、モデル農場を設定して、家畜保に険衛生所の家畜防疫員の指導のもと、モデル農場ごとのマニュアルを作りHACCPに取り組んでいる。19年度末には、全畜種を合わせ約2000農場がモデル農場としてHACCPに取り組んでいる。すべての農場が完全なHACCPとはいえないものの、まずはHACCP管理の方法を実践しようという取り組みである。

(一部省略)
このモデル事業の実施農場にアンケートをしてみると、多くのモデル農場の方からHACCPの取り組みを認める制度を作ってほしいという要望が多いことから、農林水産省では、HACCPに取り組む農場のさらなる普及をはかるとともに、消費者の選択の幅を広げるため、19年度、20年度の2ヶ年でHACCP方式を活用した衛生管理を実践する農場の認定基準を策定することとしている。昨年度は全畜種共通の基準と牛(肉用牛、入用牛)の畜種別基準の策定に取り組んでいる。また、本年度は、豚、鶏を対象とした基準の策定を行うこととしている。さらに、農場HACCPでの取り組みを普及、推進していくため、農場を指導していく農場指導員の養成を行っていくこととしている。
農場指導員は、危害分析に基づき工程管理計画を策定するなど、HACCP導入のリーダー的存在であり、HACCP導入を目指す農場経営者や従業員、獣医師、農協職員、自治体の普及員等幅広く研修を受けることができるように企画しているところである。

(一部省略)
今後の畜産の発展を図るためには、それぞれの生産者が供給する畜産物の安全性を確保することが極めて重要となっている。各生産農場において飼養衛生管理基準を遵守することを土台に、HACCP方式による、より高度な衛生管理にもチャレンジし、できるだけ病原微生物の汚染等が少ない健康な家畜を生産するのみならず、関係する各製造段階や地域が一体となってリスク低減に取り組んでいくことにより、消費者に信頼される畜産物の供給を行い、畜産経営の安定を図っていただきたい。

(全文は月刊HACCP月号 2008Vol.14を参照されたい)

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